memory
秋風のページェント」以来、ずっと書き続けているバラード曲の第3作。
この曲は評判がとても良くて、いろいろとお問い合わせをいただいていたが、私は、あまり自らこの曲について語るということはしなかったが、この機会に思う所を記したいと思う。以下は別に皆さんには関係ない話かも知れないので、単にMIDIが聞きたい方は読み飛ばしていただきたい。
私は歌の曲を作るときは、ほとんどの場合風景にモチーフを求める。それは単にメロディーだけではなく、いわばロケのように曲の中で語られる登場人物の生活する街を探す作業のようだ。ヒロインが出会い、恋に落ち、そして別れる風景を探すのは、自分自身の心の中にある風景と向き合う作業でもある。
この曲のなかには、私のつたない恋愛経験が含まれているが、作詞のドンマッコウ氏も詞の中にフィクションでは無い事を封じているかも知れない。それは、単に歌詞の中の出来事では無く、「この状況で自分はどう行動するか、何を語り、何を思うか」という事だ。キレイ事を綴るのは簡単な事だと思うが、「本当の自分」と向き合うことは、例え音楽制作であっても、とても辛い作業である、ということを理解していただきたい。
初稿の曲中に隠されたを欺瞞を最初に指摘したのは、当時のTWOFIVEのディレクター高野氏である。別に具体的に「ここを直せ」と言われたわけではない。ただ一言、「泣きたいときは、泣いていいんじゃない?」と、ただそれだけを言ったと記憶している。
自分の本当の恋愛観を自らの中に探すのは、TureEndを未だ迎えていない私には大変な作業だ。記憶の中に封印した景色は、夕方の雑踏。突然振ってくる大雨。本当のさよならを言えなかった人。すべてをぶちまけなければ本当の自分を語れないなら、そうしようと、そのときから思うようになった。せめて、曲の中だけは自分にウソはつくまい、と。
さて、前置きが長くなったので、曲について語ろう。
レコーディングはゲームオープニング曲の「夏色のシンデレラ」と同日に行われた。レコーディング中に岩垂氏が「よし、思いついたっ!」と叫んだと思えば、なぜか「あ、同じだったぁ・・」とつぶやいたのは、いったいなんだったんだろうな(笑)まあ、それはともかくとして、隣で将棋ソフトに熱中するのはやめろ(笑)気になるじゃないか。そこは私ならこうしてだなぁ・・・
E.guitarは例のごとく梶原順氏。スタジオはサウンドアライブだったかな。駅から遠いんだけどとても居心地の良いスタジオで、当時はよく使わせていただきました。使用機材は覚えてませんが、ミキサーは小林敦氏、シンセオペレーターはいつもの通り小西輝男氏なので、岩垂氏のHP内に書かれているでしょう。(なんか適当だなぁ)
歌のレコーディングの前に歌手の皆さんと顔合わせ。丹下桜嬢とは「この前はどうも」「いえいえ、どういたしまして」などと挨拶をしつつ(このへんのいきさつはSS版メルティランサー ReInforceのおまけCDを聴いて下さい)まずは声慣らしも兼ねて、ピアノで軽く歌って見よう、ということになったが、なぜか4人とも最初から食いつくように歌ってくる。な、なんだ、この異様な熱気は・・・ちょっとびびりながらも本番に突入。今回は4人で歌うということだったのだが、ある野望の為、全員各パートごとにバラして歌う構成にした。つまり、必ず各歌手がソロで歌う事にして、4人同時に歌うパートを無しにする、ということ。こうすることによって、もし誰々さんオンリーのテイクが必要、となったときでも比較的簡単に作ることが出来るのだ。結局、そのバージョンは日の目を見ることはなかったが。
レコーディング終了後はプロデューサーの多部田氏に全員寿司をごちそうになる。おおー、流石は大プロデューサーだ。あ、しかしいつぞやの「誕生〜DEBUT〜」のレコーディングの時は確かモスバーガーだったような。まあ、そのときは声優さんいなかったし、そんなもんか。あー、いえいえ、別にハンバーガーが嫌いって訳じゃないですよぉ。差し入れ大歓迎です。はい。(笑)
SC88PROでお聞き下さい。
余談、もしくは蛇足。
後に「メルティランサー Reinforce」のレコーディングの時に丹下桜嬢が、「私、この曲聴くと泣いちゃうんですウンヌン」という事をおっしゃられたので、私はその時半分照れも手伝ってか、「なにいってんだか」みたいなことを言ってしまった。大変失礼なことを申し上げたと思ってるが、私は「誰を泣かせるための曲を書くつもりじゃ無かった」という事を、是非ご理解していただきたい。私の目標は「誰かの涙を止める曲」を作ることにあるので、その点、この曲は自分にとってはまだまだ未完成なのだ。その反省から「春を待つ季節」が生まれるのである。
じゃー、自分が泣くのはいいのか?とつっこまれると弱い(笑)でも、Tコムロ氏も曲の中で
「思い切り泣いて、思い切り笑って、君を取り戻せ 夢をとりもどせ」"Self Control"より
といってるぞ。(詩を書いたのは小室みつ子女史だが)
泣きゲーも流行ってることだし、きっとこれもアリなんだな。